ふつうの図書館では、下手すると「1」とか「9」とかいう番号にすらなってしまっている書架サイン。よくても「日本のおはなし」とか、そういったものが多いですよね。その要因となっているのは写真のキャプションにもある「日本十進分類法」なのですが、一言で言えば「系統的学問分類」です。大規模図書館や大学図書館での機能的配架については、もはや欠かすことのできない分類方法と言えるでしょう。事実、日本のほとんどの図書館が同分類を採用しています。
そうすると「椎葉の風」のような郷土・地域資料についてはどうなるか。多くの場合は「別置」というそれぞれの図書館が設置する「特別な」棚として、郷土の作家が書いた小説や地理史、旅行本・・・などなどを一か所に集めているというわけです。
しかしここで主張致したいのは、この「椎葉の風」というものは「特別な棚」ではないということです。これは一時的な企画でも、椎葉村の図書館「ぶん文Bun」内の特殊な位置づけでもなく、常設され、かつ他の本棚と同じ重要度をもつひとつの棚なのです。
ぶん文Bunでは「日本十進分類法」を離れ自由な本の並びを実現したので「椎葉の風」という自由なテーマで本と本とをつなげることが可能になりました。書架の全貌はまた今度お見せするとして、その立体的・有機的な構造はこれまでの本棚空間と明らかに一線を画しているのです。
「椎葉の風」には、椎葉の歴史(平家落人伝説・鶴富姫伝説・・・)や文化(神楽・狩猟・祭事・・・)、そして自然(ダム湖・焼畑・日本三大秘境の景色・・・)、といった様々なテーマの図書を「椎葉」・「椎葉らしさ」という要素に引き寄せて収集するテーマなのです。
つまり「自然科学」とか「社会科学」といった従来の図書館分類(まさに日本十進分類法=NDC)では結びつきえなかった本たちが「椎葉」という世界に引き寄せられ、これまでは隣り合うことのなかった本たちが近接することで新たな物語が生まれるのです。
こうした本たちを、のっぺりと平面的な本棚ではなく「立体的な書架に配すること」。それを可能にする舞台装置が今、椎葉村交流拠点施設Katerieの図書館「ぶん文Bun」に整いました。