椎葉村図書館「ぶん文Bun」には、いくつかの特集棚があります。コハチローのおすすめ「番」や、クリエイティブ司書の推し本、そして林遣都さん推し棚…。

どれもが胸を張っておすすめできる本ばかりを並べた棚ですが、今回新しくつくった棚は昨今の「予想外」な出来事が続く世の中にぴったりかもしれません。たくさんの写真と共にご紹介しますので、ぜひご覧くださいませ。

まずは、前回の「感染症とオリンピック」を解体…。インフルエンザやコロナ、オリンピック選手、それぞれを巡る社会問題などの本は、ぶん文Bun内の23のテーマに分別され本と本とが素敵に連鎖するよう工夫されながらディスプレイされていきます。さようなら~。

コロナウィルスが私たちにもたらしたのは、本当に「予想外」の世界でした。まさか友達と自由に集えなくなったり、家族のもとへ帰るのがはばかられるような日々が来るなんて思っていませんでしたよね。それって、まるで戦争状態みたいなものじゃないか…。そんなことを思ったりします。まさに「緊急事態」ですよね。

人がいない東京・新宿の街中に掲げられたオーロラビジョンから虚空へ向けて放たれる小池百合子都知事のコメントをニュースで聞いていると、どこかで見たことがある近未来のディストピア世界を彷彿とさせられたものです。

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その「どこかで見たことがある近未来のディストピア世界」とは何か?

どこで見たことがあったのか?

見たことがあるとすれば、それは「誰かがこんな世の中を予想していた」ということにならないだろうか?

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そう、今回の特集は「予想外を予想する者たち」。ずばりSF世界です。

SFに欠かせない要素である近未来型ロボットの本も取りあげ、SF作品だけでなく映画評論やAI・機械・ロボット論も含めながら特集を組んでみました。

特集棚はこんな全景…。サインボード(看板)には、やっぱり日本SFの重鎮!ということでゴジラを描いてみました。水爆実験が生んだ悲しき怪獣が「日本のも海外のもあるぞう」と、邦文学と海外文学両方のSF作品をたくさん揃えているんだと主張しています(笑)

ちょっと読みづらいですが「Science Fiction / Artificial Intelligence」はSFとAIという略語を解体したものです。チョークで描くのがめちゃくちゃ大変だったので、間違ってもこすり消したりされませぬよう…。

それにしても「こんなにあったのか」というくらい、ぶん文BunにはSF本が充実していました。約17,000冊という少ない蔵書のなかでこれだけSFがあるというのはどこか不思議なもので、この予測不可能な現代を俯瞰するための手引書としてぜひ皆さんにも紹介したいと思い至ったところです。

どんな本があるのか、少しクローズアップして見ていきましょう。

夢枕獏と眉村卓、そして山田正紀。夢枕獏さんは『陰陽師』の作者でも有名ですね。

香山滋による『ゴジラ』ノベライズ。そして今日泊亜蘭と小栗虫太郎。

『時をかける少女』を囲む筒井康隆シリーズに星新一。バックにはずらりと並ぶ『魔界水滸伝』。

田中秀樹と高千穂遙の連作を、上遠野浩平『ブギーポップは笑わない』と山本弘『ゴーストハンターラプラスの魔』が挟み込む。

日本SFの真骨頂を読み解くハヤカワ・アンソロジー。

新井素子さんもしっかりと。

貴志祐介、池澤夏樹、そしてオルダス・ハクスリーの「新世界」。

フランスSFの黎明である『海底二万里』(ジュール・ヴェルヌ)から海外SFを始めましょう。隣にはウェルズがあり、アイザック・アシモフがあります。

「ここまでやるか!」というくらいのカート・ヴォネガット。オーウェルの『一九八四年』があり、『動物農場』もある。『一九八四年』なんて、まさに今読むべき一冊だと思うのです。

やっぱりSFといえば『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』…なんて言っていたら「夢を見るか?」シリーズがたくさんあったので集めてみました。もちろん隣には『ブレードランナー』と『トータル・リコール』を。

機械、そしてAIをめぐるいくつかの論考を合わせて。物語と共にたしかな学びを得るいい機会をぜひこちらで手に入れてください。

[BookShelf Image]:6

 クリエイティブ司書全力のおすすめトップ3はこちらの三冊。ぜひぶん文Bunにてお手にとってみてくださいね。

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【番外編】


「『SF×AI』~予想外を予想する者たち~」ができるまで。

ぶん文Bunの特集棚につけられたサイン(看板)は、黒板塗装のボードを鉄骨製の本棚にボルト留めしたもの。粉の出ないチョークでアーティスティックに描いています。素人仕事ながら、なかなか上手でしょう?

ちなみに大元となるラフ画は、ぶん文Bunのクリエイティブ司書が鉛筆で書きます。その画像がこちら…。

…あれ…?
これが本当に…?
クリエイティブぅ??

その様たるや「ゴジラというより腐れかけの鯉」。100年の恋も冷める出来栄えです。

でも、これでもだいぶ良くなったんです。その前の『時をかける少女』を描いてみようとした作品は残念ながら(安心すべきことに)完成前に没収されました。

て、ティンカーベル?(失礼)

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・・・というわけでクリエイティブ司書の描画力に多大なる不安を残しつつ、新しい棚「『SF×AI』~予想外を予想する者たち~」の紹介とさせていただきます!黒板アートについてはもう一人のぶん文Bun担当がぴしゃっとつくりますので、その点は是非次回もご期待くだいませ!

それでは、残暑も厳しい折ですがお体にお気をつけて…

(クリエイティブ司書・小宮山剛)

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