ぶん文Bunレビューキャンペーン」に新たな感想をお寄せいただきました!


今回の投稿はぶん文Bunネーム「円」さんから。いつもありがとうございます!

 

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※※※ぶん文Bunの資料なら、借りても借りなくてもレビュー歓迎!※※※

 

今回お読みいただいたのは『すべてがFになる』などの作品で著名な作家さんである森博嗣さんが著した『読書の価値』。小説家の読書論という、興味を惹かれる一冊をチョイスしていただきました!

 


 

『読書の価値』(森博嗣)

 

森博嗣さんの小説はよく読んでいましたが、実用書を読むのは初めてです。

 

冒頭の数ページで、やはりこの方は一種のサヴァン症候群なのだろうと感じました。 といいますか、そう思ってしまうのは、森さんが生みだされたキャラクターである天才科学者・真賀田四季が、自分の中では特異な存在として色濃く残り続けているからなのかもしれません。 つまりは、あんな人物生み出してしまう作者の頭の中どうなってんだよということです。(もちろん誉め言葉)

 

読書論についての本書ですが、森さんが幼少期から現在にいたるまで、本とどのように付き合ってこられたかが分かるので、個人的にはその点が面白かったです。 世間一般の常識や考え方とは一線を画したユニークな見方で綴られる読書論ですが、言っていることはどれも単純明快で納得のいくものばかりなので、本の読み方(接し方)で悩んでいる人にとっては十分に参考になるのではないでしょうか。

 

あとがきを読むだけでも、著者の浮世離れした感覚や、ゆるっとした感じの潔さがあって面白いです。(養老孟子さんと話が合いそうだからいつか対談してほしいなと思ってたら、既に『文系の壁』で実現されていたようです。いつか読んでみたい。)

 

読書法としては速読がもてはやされがちな昨今かもしれませんが、それははたして「読んだ」と言えるのかという著者の見方にも同意です。森さんの読み方は、森さんが抱えているかもしれないディスレクシア(失読症)故の読み方という面はあるのかもしれません。それでも、森さんいうところの“文章からイメージを展開することが、小説を読むという行為”という真っ当なことを再認識し、心がけたいものです。

 

文章の一つ一つを鮮明にイメージとして展開しているかと言われれば、自分もそうとはいえないので。 そんな読み方は新幹線で流れる景色をただ見ているだけのようなものだという著者の言葉には、全くもってその通りと頭を垂れる他ありません。

 

そしてなりより、この本のテーマは、“本は自分で選べ”。 その点、この椎葉村図書館「ぶん文Bun」は、楽しみながら本を選ぶことができるでしょう。(こんなユニークな書架、他では見たこと無いです。) 気持ちも新たに本に接しようと思わせてくれる貴重な一冊でした。

 

 


円さん、今回も力作レビューをありがとうございます。森博嗣さんの一冊からさらなる興味が広がっていくような、含蓄豊かなレビューですね。

サヴァン症候群」については参考としてWikipediaのリンクを貼っておきますが、自閉症等の症状をもちながら記憶力や芸術に関して異様なまでの才能を発揮する人物を表します。「鬼才」「奇才」ということばが躍るとき、こういう可能性がおおいにありますよね。

サヴァン症候群(らしき)人物が登場する作品としてWikipediaにていくつか例が挙げられていますが(『吉里吉里人』、『静かな生活』、『緋弾のアリア』、『クビキリサイクル』、『四日間の奇蹟』)、大江健三郎の『静かな生活』と西尾維新の『クビキリサイクル』についてはぶん文Bunでもご用意しております!

今回のレビューのなかで一番嬉しかったのは、レビューの締めくくりの部分です・・・

 

そしてなりより、この本のテーマは、“本は自分で選べ”。 その点、この椎葉村図書館「ぶん文Bun」は、楽しみながら本を選ぶことができるでしょう。(こんなユニークな書架、他では見たこと無いです。) 気持ちも新たに本に接しようと思わせてくれる貴重な一冊でした。

 

・・・いやはや、こんなにも嬉しいことばがあるでしょうか。これはまさに、ぶん文Bunの狙わんとするところなのです。

「本とのセレンディピティを生み出したい」。
この一心で、本と本とが繋がり棚と棚とが繋がる有機的な集合体としての「エディット・キューブ」を編みまくってきました。今も生きもののように変化し続ける本棚を管理するのは正直なかなか大変ですが、こうした一言をいただけるのであれば報われるというものです。

椎葉村図書館「ぶん文Bun」の全景

「本に興味がない人も、ここに迷いこめば出逢いがある」。
そんな椎葉村図書館「ぶん文Bun」で、ゆったりとした時間を過ごしてみませんか?

・・・さらにもう一つ嬉しいのが「読書法としては速読がもてはやされがちな昨今かもしれませんが、それははたして『読んだ』と言えるのかという著者の見方にも同意です」という部分。

ぶん文Bunのクリエイティブ司書小宮山もそう同意するからこそ、このぶん文Bunレビュー企画を開始しました。「読んだ気になる」読書や、ページを繰ることだけを目的とした読書などはあまりにも勿体ないものです。もちろん、眺めるための本や装丁の美しさを味わう本は別格なのですが、最上級な本の楽しみ方というものは文章をしっかりと咀嚼し自分のことばとして語ることができることだと思うのです。

読書はいま、「読む」から「語る」へ。
そんな合言葉がこの企画を通じて広まれば嬉しいです。

 

・・・・・・・

 

円さん、レビューの更新が遅くなってしまいましたがとても嬉しいご感想でした。これからも、良い出逢いがありますように。

  

※※↓その他のレビューもご覧ください↓※※

 

ぶん文Bunネーム「ぽよ」さん — 『日本語のために』(池澤夏樹編)

ぶん文Bunネーム「ななろくに」さん — 『むらさきのスカートの女』(今村夏子)

ぶん文Bunネーム「ななろくに」さん — 『竜馬がゆく』(司馬遼太郎)

匿名希望さん — 『歎異抄[まんが学術文庫]』(唯円)

ぶん文Bunネーム「ろなさん」さん — 『記憶喪失になったぼくが見た世界』(坪倉優介)

ぶん文Bunネーム「円」さん — 『白い牙』(ジャック・ロンドン)

ぶん文Bunネーム「ななろくに」さん — 『痴人の愛』(谷崎潤一郎)

 (クリエイティブ司書・小宮山剛)

2024年 (令和6年)
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