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久々の更新となってしまいました、ぶん文Bunレビューです!レビュー自体はたくさん届いていますので、またぼちぼちと更新していきますね!

 

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今回のレビューは「円」さんから。いつも熱いレビューをお送りいただきますが、今回の内容はちょっとひんやり・・・?ぜひご覧くださいね。

 

『サバイバルボディー:人類の失われた身体能力を取り戻す』(スコット・カーニー)

 

日本でもバラエティー番組で取り上げられていた、“アイスマン”(短パン一丁で氷風呂に平然と浸かるヴィム・ホフというおじさん)。 本書はそんな彼が提唱するヴィム・ホフ・メソッドが、実際に効果的なものなのか、それとも眉唾ものの行為なのかを、ジャーナリストのスコット・カーニーという方が、このメソッドを試すことで解明しようとする内容になっています。

 

酸素を体内に大量に取り込む呼吸法により、神経系をコントロールすること。そして寒い環境にあえて身を置くこと(氷風呂や冷水シャワー等)で、そうした環境に耐えうる肉体を造っていくこと。おおまかにこの二つが彼が提唱するメソッドです。

 

ええ、呼吸法に加え寒冷にあえて身を晒すとかもはや修行です。漫画の世界じゃあるまいし風邪ひくだけだよと思われる方は多いかもしれません。 とはいえ、実際にこの呼吸法を試し冷水シャワーを何度か浴びていく内に、個人的にそうした疑いは払拭されました。

 

呼吸を長い間止める事や、冷水シャワーを浴びる事は、常識的に考えれば苦行以外のなにものでもありません。ところがこういった行為があまり苦にならないのがこのメソッドの凄みです。むしろ快すら感じます。とか言うとただの変人ですが、これは人間が普遍的にもつ能力の一つなのだろうと思います。

 

というのも、呼吸を止めたり冷水シャワーを浴びたりする際、脳はランナーズハイと同様エンドルフィンを大量に放出するようなのです。生命の危機と判断した脳が、それに対処できるようこうした脳内麻薬を生み出すのでしょう。

 

また呼吸法により自律神経が整えられ免疫能力が強化されることや、寒冷に身を晒すことで褐色脂肪細胞(効率的に熱エネルギーを発生させることができる細胞)が活発になること等に関して、科学的根拠も丁寧に説明されています。

 

ですが、だからといって他人にこの健康法をすすめることはまず無いでしょう。本書の導入部には命に危険が及ぶ可能性があることについての警告や、確かにと思える次のような引用文もあります。

 

 

“~冷水浴の習慣がある人はえてして達成感に酔いしれて、そうでない人を見下し、「自分が特別な人間でよかった」と思いがちだ。しかし実際には、日常的な冷水浴や冷たいシャワーは、やせぎみ、もしくはやせすぎの人にとってはとくに、害になる場合が非常に多い。”

―― 米国医師会雑誌(JAMA)、一九一四年

 

 

危険なことをやってそのことに酔いしれるという人は多いはずで、自分もその気持ちが分からないわけではありません。ですが危険行為が平然とできたとて、それで周りがどう反応しようとイコール凄いことでも称賛されることでもないわけです。むしろ、あえて命を危険に晒すのは馬鹿げたことでしょう。

 

では、ヴィム・ホフは何故このメソッドを世界に広めているのか。 それはうつ病で自殺した奥さんに対する悔恨というか、強い思いがあるのかもしれません。自分の意志で自律神経を整え強化することができるなら、精神疾患さえよくなるはずだと。

 

一方でこの方は、極限状態に自分の身を置くことで、人間の肉体がいかに柔軟で強靭か、そして神秘的にできているかを探求しているのではないだろうかと感じました。メディアが彼を持ち上げて騒ごうが、彼自身はそういったことには頓着せず、どこか永遠の少年のような魅力的なオーラさえあるのです。自分個人が受けた印象ではありますが。(キリマンジャロの山頂で著者と共に肩を並べ、短パン一丁で満面の笑みを湛えるヴィム・ホフの姿の清々しいこと……)

 

短パン一丁でキリマンジャロに登りたいとは思いませんが(笑)、人体が秘めている可能性を強く信じさせてくれる一冊でした!

 

 

円さん、ありがとうございます!円さんもヴィム・ホフ・メソッドを試行されたとのことですが、その快感には強い共感をおぼえます。

実はクリエイティブ司書・小宮山も、水風呂はもちろん冷水に入ることで鍛えられる身体性・精神性というものに着目していた時期がありました。きっかけは学生時代「冬に湖・海などに浸かる」習慣がある友人たちと過ごしていたからなのですが、それ以来冬場の川に入ったりすることが多くありました。

何といっても至高なのは「滝業」です。魔払いをして真冬の凍てつく雪を踏みしめ、目の前に迫る滝の中へ踏み入る一瞬に何か大いなるものとの同一感すら感じたものです。ちなみに下の写真は、とある年の大晦日に富山県の大岩山日石寺にて滝業をした際の様子です。画素数の低さが、時代を物語っていますね。

「読書」から「実践」へ、そして「語り」まで繋がった今回の円さんの読書体験。素晴らしいレビューをありがとうございます。また続いて更新させていただきますので、今後ともよろしくお願い致します。

 

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※※↓その他のレビューもご覧ください↓※※

 

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※椎葉村図書館「ぶん文Bun」に置いてある本はこちらのページにて検索できます。

 

 (クリエイティブ司書・小宮山剛)

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